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【第3回掲載分】自閉症の仲間

 自閉症を中心とする発達障害の精神科診療をしていると、よく次のような質問を受けます。
 「アスペルガー症候群って、自閉症とは違うのですか?」「高機能と言われたんですが」「広汎性発達障害って何ですか?」
 自閉症の診療が積み重ねられるに伴って、分類をするために色々な用語が使われるようになりましたが、これらは自閉症の仲間を表現するための言葉です。
 アメリカの精神医学会が分類した診断基準をわれわれもよく用いますが、その中では自閉症は広汎性発達障害という障害の中に含まれています。すなわち、広汎性発達障害というのは自閉症の仲間の総称です。
 広汎性発達障害には次の5つが含まれます。

  1. 自閉性障害(自閉症)
  2. アスペルガー障害(アスペルガー症候群)
  3. 小児期崩壊性障害
  4. レット障害
  5. 特定不能の広汎性発達障害(非定型自閉症を含む)

順に見ていきましょう。
 自閉性障害は自閉症のことです。診断基準の中では自閉性障害と書かれています。前回述べたように、対人関係の障害、言語・コミュニケーションの障害、こだわり・興味の偏りの3つの特徴が認められる障害です。そして、3歳以前にその特徴が見られるというのが重要です。
 アスペルガー症候群は、自閉症の特徴のうち、対人関係の障害とこだわり・興味の偏りは認められますが、著明な言葉の発達の遅れがないものを言います。具体的には、「2歳までに単語、3歳までに2語文を話す」というのを目安にします。自閉症―言語障害=アスペルガー症候群とおっしゃる先生がいますが、そんな風に考えていただけると良いかと思います。
 小児期崩壊性障害は、少なくとも2歳までは全く正常に発達していたけれどもその後話していた言葉が消え、自閉症の症状が出てくるものです。頻度はあまり多くなく、私自身もまだ出会ったことはありません。
 レット障害は女児のみに見られる非常にまれな障害で、生後数ヶ月の正常な発達の後に、手の能力や歩行の能力が失われ、対人関係や行動などで自閉症に似た特徴を呈し、重度の知的発達の遅れを認めます。
 この2つは、非常にまれな障害ですし、自閉症的な症状よりも発達の遅れの方がより問題となるものであるので、あまり考えなくていいかと思います。
 さて、問題は「特定不能の広汎性発達障害」です。これは自閉症の3つの主たる特徴を不完全に満たすものです。
 例えば、対人関係の障害や言語発達の障害は特徴的だけれども、こだわりはあまりはっきりしないなどといったものです。こだわりは年齢の幼いうちははっきりしないことも多く、後になると自閉症の基準を満たすと言うことも少なくありません。いずれにしても、自閉症と本質的な違いはないと考えて、対応して頂く方がわかりやすいかと思います。
 もう一つ、「高機能」という言葉について述べておきます。「高機能」とは知的な遅れがないということを指します。知能検査をして知能指数(IQ)が70以上の場合に使います。
 では、アスペルガー障害と高機能自閉症は同じなのか違うのか、という疑問が出てくるかと思います。
 定義からすると、言葉の発達に遅れのなかったアスペルガー障害に対して、遅れがあったがそれを成長の中で取り返して知的発達の遅れのなくなったのが高機能自閉症ということになります。研究者の間では、今でも議論になっていますが、本質的には両者は同じ物ではないかと考えています。
 次に「自閉的」という「用語」について述べたいと思います。
 「自閉的と言われましたが、自閉症とは違うんですか?」という質問も受けることがあります。「自閉的」というのは、自閉症の特徴が見られると言う意味の単語ですが、正式な診断名ではありません。この言葉の使い方は医師によって違うようですが、大体は、はっきり自閉症の特徴がそろっていないが自閉症の疑いが強いようなとき、すなわち先に述べた特定不能の広汎性発達障害の時が多いのではないでしょうか。「自閉的」と言われたときには「診断名は何ですか?」とはっきり聞いて頂くとはっきりするのではないかと思います。
 アスペルガー症候群と犯罪との関係について、最後に述べたいと思います。
 昨年起きた少年事件の加害者の少年について「アスペルガー症候群」との鑑定結果が出た事が報道され、それまでなじみのなかったこの障害名が一気に有名になりました。こういう形で知られるようになったのは大変残念なことです。アスペルガー症候群や自閉症の人の犯罪の報告は決して多くはありません。人の心を読むことが苦手な人たちですので悪意と言うものは生じにくい傾向にあると思われます。あるとしても、社会のルールを理解できないが故のトラブルや彼の特性を理解できずに対応したことに対する反応がほとんどです。逆に、真正直だったりずれた反応をしたりすることで、いじめや犯罪の被害者になることの方が圧倒的に多いと思われます。
 ただ、先の事件もそうですが、犯罪を起こしたアスペルガー症候群の人のほとんどはそれまで診断がついていない例でした。診断がついていないために、周囲が彼らの内面を理解できずに受け入れられなかったり、彼らの特性に合わせて社会のルールや対人関係のあり方を学んでいってもらうように配慮することが出来なかったことが、大きく影響したようです。早期の診断と周囲の方の理解が何よりも大切だと思います。 (今回の内容が前回の予告と異なったことをお詫び申し上げます)