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【第4回掲載分】自閉症って何なの(前編)

 自閉症の特徴として、対人関係の問題、言葉・コミュニケーションの問題、こだわり・興味の偏りの3つについて以前述べました。どうしてこういう特徴が見られるのでしょうか?まだはっきりとした結論は出ていませんが、現在最も有力な手がかりをもとに説明を試みてみたいと思います。
 一つは、「他人の気持ち・意図を読み取るのが苦手」ということです。
 当初は、他の人にも心があって、自分に対して思っていてくれる、あるいは関心を抱いていてくれるということさえピンときていません。このため自閉症の乳幼児にとって、身近な人がとても大事な存在であると思えないのです。生活していく中で、身近な人(特に母親)は自分の世話をしてくれて生活を助けてくれる存在であるということは分かってきます。しかし、情緒的な結びつきがなく、一緒にいると安心できるという感じを持っていないので、用がなければ一緒にいようと思わないですし、離れていても平気です。だから外に出ると好き勝手に走っていき迷子になっても不安な様子がありません。強い関心を持っていないのであえて注目して顔を見る(視線を合わせる)こともないですし、呼ばれる声にも返事をすることはそれほど大事なことではありません(本人にとって)。そのため人に対して関心が薄いという特徴になります。
 自閉症の子どもの赤ちゃんの頃の話を聞くと、「人見知りがない」と「おとなしくて手がかからなかった」という話がよく聞かれます。人見知りは一般的には6-10ヶ月頃から始まり、慣れない人に抱かれたりすると大泣きし、お母さんのところに戻ると泣き止むというものです。これはお母さんと他の人を区別し自分の安心できる人を認識している現れです。おとなしくて手がかからなかった子というのはあまり人を求めなかったということを意味します。一般には赤ちゃんのうちは、泣いてお母さんに抱いてもらってあやしてもらって安心して泣き止むということを繰り返すため、手がかかって大変という時期があるのではないでしょうか。もちろんこういった特徴のある赤ちゃんがすべて自閉症というわけではありませんが、後から振り返ってみるとこの時期から人を求める気持ちが薄かったと言うことになるのだと考えられます。
 もちろん自閉症の子どもの対人関係も発達しますので、だんだんと母親を認識し、べたべたするようになります。外でも勝手に行ってしまわないで目の届く範囲にはいて母の方をちらちら確認したりします。言葉も話すようになり、意思の疎通も可能となります。この頃の特徴としては、人見知りがなく馴れ馴れしく知らない人に話し掛けたり、一方的に相手の反応を構わず接近していきます。急に気に入った子に抱きついて、相手が泣きそうになっていてもニコニコしています。他者に対して興味関心が出てきたのですが、「相手がどう考えているかを感じる」のが苦手なのです。
 集団行動には、かなり発達した子どもでもなかなか苦労します。周りの人の意図を読み取るのが苦手ですので、
まず、先生が「みんな、○○しましょう」という時の「みんな」が自分を指しているかがはっきりしない。それから、その場の空気を読んで行動するのがピンと来ない(式典のときは静かに座っているとか)。あるいは周りの行動に合わせて自分も行動するという事がなかなか出来ない。だから具体的に何をするべきかを指示してあげる必要があります。
 ところで、自閉症の子どものこうした対人関係の遅れは生まれつきの脳の問題です。自閉症の子どものお母さんと話をしていると、「小さいときにあまり構わなかったから」と言う話が出てきます。しかし、お母さんが構わなかったから愛着が育たなかったのではなくて、もともと生まれつき人に対して関心の薄い子どもで、一人でいても平気だったのです。子どもの方から求めてこないので結果的に関わりは少なくなる傾向になりますが、それが根本の原因ではないのです。そこは周囲の方もよく理解して頂ければと思います。
 さて、言葉の遅れにも対人関係の問題が大きく影響しています。そもそも言葉というのはどうして発達していくかというと、相手に関心があって、相手が何を言っているのかなと思ったり、相手の言っていることややっていることを真似しようとしたり、あるいは自分の意志を何とか相手に伝えようとしたり、そういったコミュニケーションの意欲があって言葉が獲得されていくのだと考えられます。人への関心がしっかりしていないと言葉を使う必要はあまりないのです。もっとも、言葉の発達は知的な発達の状況が大きく影響します。自閉症の子どもの中には知的な発達がゆっくりな子どももいますので、その場合は対人関係と知的な発達の両者が揃うことで言葉が発達してきます。自閉症の子どもと会っていると、母親との愛着が見られ対人関係が発達するときに、同じ頃に言葉もぐんと伸びる場合をよく経験します。
 オウム返しも特徴の一つです。「これ何?」と言われて「これ何?」と答える、あるいは「りんご食べる?」とりんごが欲しいときに疑問文のように語尾を上げて話します。「りんご食べる?」とお母さんから言われると同時ににりんごをもらえた経験があると、自分もりんごが欲しいときにはそう言えばいいという風に認識します。状況や相手の意思・立場によって言葉の使い方が変わるということがなかなか理解できないのです。
 言葉の発達が良好の子どもでも、一方的に自分の話をしたり、場にそぐわない会話になったり、あるいは目上の人にでも同じように話したりします。これは相手の意図を読んでそれに合わせる事がうまく出来ないからと考えられます。
 相手の気持ちが読み取れないということから自閉症の子どもの特徴について考えてきました。3つの特徴のうち、対人関係の問題と言葉・コミュニケーションの問題についてはある程度説明できたのではないかと思います。
 もう一つ、大事な手がかりがあります。それは、入ってくる情報を整理して全体として捉えて考えることが苦手なところです。次回はこれについて考えながら、更に自閉症の子どもの特徴について整理していきたいと思います。