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【第5回掲載分】自閉症って何なの(後編)

 前回は、自閉症の特徴を考える上で、「他人の気持ち・意図を読み取るのが苦手」という有力な考え方をもとに、自閉症について考えました。今回はもう一つの大事な手がかりである「入ってくる情報を整理して全体として捉えて考えることが苦手なところ」について説明しながら、自閉症の子供の特徴について考えたいと思います。
 自閉症の3つの主たる特徴として、対人関係の障害、言語・コミュニケーションの障害、こだわりがあるという話は今までに何度か述べてきたと思います。今回の話は主にこだわりに関係する所です。常同行動、興味の偏りというのも、大きくこだわりの仲間に入れて考えればいいかと思います。
 「入ってくる情報を整理して全体として捉えて考えることが苦手」だと、どういうことが起こるのでしょう。
 一つには、状況の理解が難しくなります。
 我々は生活する中で、様々な情報を取り入れています。こうしているだけで、いろいろな音が入ってきます。エアコンの音、外の車の音、テレビの音、家族が自分を呼ぶ声、我々はその中から、自分の必要な音のみに注意を絞り、他の音はあまり意識の中に入ってきません。また、その中でも自分の身近な人の呼び声には、ことのほか敏感に反応します。
 それが出来ないとどうなるでしょう。様々な刺激がワーと洪水のように入ってきてそれをうまく整理が出来ず、意味がつかめないと、とても不安な気持ちになります。例えば我々が言葉の通じない外国に一人で行って通りの喧騒の中に立ったときのことを想像してみて下さい。よく分からない話し声が周囲から聞こえてきますが、それはただの騒音でしかありません。そうしたときにどうするか。例えばCDを聞いたり本を読んだり、ぼーっと考え事をしたりといったことに集中して、周りから聞こえてくるものを気にしないようにするかもしれません。常同行動というのはそういうことなのかなあと思います。手をヒラヒラさせてそれを見ていたり、くるくる回っていたり、そうしている間は呼んでも反応はなく、周囲の世界とは断絶しているかのようです。本人としては、訳のわからない「音の洪水」に振り回されず、自分のわかる刺激を楽しむことで精神的な安定を図っているのでしょう。
 もう一つは、あいまいなことがよく理解できないということです。
 自閉症の子どもはユニークなものに興味を持つことがあります。
 それは文字や数字、マーク、キャラクター、カレンダー、あるいはコンピューター、時刻表、地図、いろんな「特定の知識」・・・
 これらに共通することは、答えがはっきりしていて変化しない、無機質なものということです。マクドナルドのマークはどこにあっても同じです。数字は誰が書いても大体似た形をしています。例えばこれが「犬」になると、柴犬とセントバーナードとブルドックとが、総て犬なのかというのは、大変分かりにくい。明確な指標が決まっていないからです。また、コンピューターだと打ち込んだものに対応した決まった答えが返ってきますが、人との付き合いでは、相手によって反応が違います。文脈や態度からニュアンスを感じ取らないといけません。なかなか難しいことです。
 あともう一つは、何が大事かがよくわからないということです。
 例えば、ある状況で嫌なことが起こった時、何が原因か分からないときには自分で判断するしかありません。母親が赤い服を着ていたときに歯医者に連れて行かれて痛い思いをすると、赤い服も大嫌いになります。逆にある状況でうまくやれているときにちょっとでも変わったことがあると、何か大変なことが起こるんじゃないかと心配になります。だから置いてあるものの位置も、日常生活の順序も母親の服も、みんな同じだと安心します。これがこだわりの要因の一つだろうと考えています。
 まとめると次のようなことになるのかなあと考えています。常同行動は、周囲の世界がわからないのですべてを遮断している状態。興味の偏りは、分かるものだけを選択してそれにのみ意識を向けることであいまいなものは気にしないようにすること。こだわりは、あいまいな現実を本人なりに分かりやすく無理やり枠にはめて理解しようとすること。
 この3つの特徴は、違うようで似ているように思えてこないでしょうか?
 常同行動は、知的に幼い段階に多く見られ、成長とともに少なくなります。興味の偏りやこだわりは、知的な理解が発達して、周囲の世界がわかってくると少なくなりますが、常同行動と比べると、かなり成長してもその特徴がどこかに見られたりします。
 こだわりについてすべてこれが原因というわけではなくて、いろいろな場合があります。これを読んですべて当てはめるとしっくり来ない場合のほうが多いのではないでしょうか。
 大事なことは、彼らのする行動について、「なんでかな?」と考えてみることだと思います。訳のわからない不思議な行動にも、彼らなりの理由があるのです。すべてわかるわけではありませんが、わかろうと努めることが、彼らをよりよく理解し、うまく付き合っていくための第一歩となるのだろうと思います。