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【第6回掲載分】自閉症の「治療」について

 自閉症の子どもについて理解するための手掛かりになるような事柄を前回までに述べてきました。今回は「治療」について考えていくことにしたいと思います。
 以前にもお話しましたが、自閉症は生まれつきの脳の障害です。もともと、脳の働きがうまくいっていないところがあって、そのために生活する上で極端に苦手なところが出てきます。苦手なところというのは、前回までにお話ししたような「他人の気持ち・意図を読み取るのが苦手」とか「入ってくる情報を整理して全体として捉えて考えるのが苦手」といったようなものです。そういった苦手なところが原因となって、視線が合わないとか、言葉が遅れるとか、オウム返しとか、こだわりとかといった自閉症の特徴が出てくると考えれば良いかと思います。
 脳の障害と言いましたが、実際のところ、現在はまだ脳のどこがどのように問題なのかははっきりしていません。そのこともあって、自閉症の治療法は特効的なものはありません。一時期、自閉症の治療薬なのではないかと言われた薬がありましたが、その後の研究で効果が認められないことがはっきりし、現在は使われていません。特別な訓練というのもありません。一部の子どもには言語訓練や感覚統合訓練が行われることもありますが、必要があるのは一部の子どもですし、自閉症自体を治療するわけではありません。
 では何もしなくてもいいのかというわけではなくて、適切な働きかけにより、大きく変化・成長をします。苦手なところを治そうというのではなくて、苦手な所を周りの人が理解し、混乱や不安を与えないよう、本人がわかるように関わってあげ、わかるような働きかけをしてあげる必要があります。
 人とうまく付き合えない初期の段階では、人に対して関心の非常に薄い状態に対してまず対処する必要があります。「分かりやすい指示」をしても、あるいは訓練をするにしてもこちらに対して関心を持ってくれて言うことを受け取ってくれなければ意味がありません。
 まず、「自分以外にも周りに人がいて、自分に対して働きかけたりあるいは自分のことを思ってくれている」「その人と一緒にいるととても楽しいし、安心する」といったような他の子どもならばごく自然に感じていることについて分かってもらうことが必要となってきます。
 そのためには、まず一番身近な人との関係をしっかり作ることが必要です。多くはお母さんになるでしょうか。ひとつにはよく遊んであげることです。とは言っても彼らが遊んでいるところに加わろうとするとかえって怒られたりしますし、あやしてあげても反応がなかったりあるいは長続きしなかったりします。それはお母さんに遊んでもらっているということがよく分かっていないからです。
 だから最初は難しいあそびは出来ません。最初は身体を使った遊びがよいと思います。くすぐったり、揺さぶったり、持ち上げたり、振り回したり・・・。後は手遊び、親子遊びの類になります。こういう遊びの良さは、ひとつには身体の感覚を刺激する遊びは理解力に関係なく誰でも楽しめます。それから、本人にその気がなくてもこちらがその気であれば遊んであげられます。それからこれは一人では絶対に出来ない遊びです。
 最初のうちはなかなか乗ってこないかもしれませんが、本人から求めてこないからやらないとしてしまうと機会がなくなりますので、本人がいつもの遊びに一段落ついた頃に父母の方から積極的に仕掛けていくのが良いかと思います。一人で車を並べているよりもお父さんお母さんと遊んでいると楽しいなと思ってもらえて、自分からせがんでくるようになれば成功です。一緒に遊べるようになれば、手遊びやマネ遊び、ボール投げなどやり取りのある遊びを少しずつ取り入れていけば良いかと思います。
 やってみれば分かりますが、こういった遊びは疲れますので長くは持ちません(大人の方が)。また、他の用事ももちろんありますから、ずっとべったりである必要はありません。折をみてやってあげるよう心がけるということでよいと思います。
 こういったことは、家でずっとやっているのは、何をしたら良いか考えるのも大変ですし、反応の少ない子ども相手にやっていると気が重くなることもあります。そこで市町村でやっている療育教室に行かれるのを勧めます。親子教室は保険センターが主となってやっており大抵は月に1-2回です。母子通園施設は週に3-5日で、特に自閉症の子どもにとっては初期の段階で通う適応となるところです。
 母子通園施設は、お母さんと子どもとが一緒に通う園で、母子関係を深め、集団活動に乗る練習が出来るよう、親子遊びや簡単な集団遊びを中心としたプログラムを組んでいます。身辺自立なども園の先生に手伝ってもらいながら他の子どもたちと一緒になることで出来るようになったりします。特別な活動や訓練をしている訳ではありませんが、実際に通いだした子どもたちに会っていると、数ヶ月のうちに多くの子が変わっていくのを経験します。母子の愛着・対人関係の育成にはとても有効であると思います。
 ところが、母子通園施設というのは市町村によってある所とない所があります。当センターが地域療育で担当している海部郡・津島市・西春日井郡の20市町村のうち、母子通園施設があるのは、5つ(師勝町、西春町、西枇杷島町、津島市、蟹江町)です。少なくとも人口3万人以上または年間出生数300人以上の市町では必要な対象児童が十分いると思われますが、他の市町村ではまだ設立の話は聞こえてきません。
 母子通園のない地域では、親子教室を利用するか、自主グループの運営する療育機関への参加が多いようです。詳細は在住の市町村の保健センターに相談してください。
 「治療」という言葉からはかなりイメージの違う話になってしまいました。「治療」を期待された方はがっかりされたかもしれません。しかし、自閉症の子どもに対しても、こういった対人関係を中心とした全体的な発達を促す療育が初期の段階では最も必要なことであり、その後必要があれば訓練を考えれば良いかと思います。
 対人関係が少し出来た後に問題になってくるのは、いかにわかるように働きかけるかでしょう。彼らとうまく付き合うためにはどこに気を付ければ良いのか。そのあたりについて、次回お話したいと思います。