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【第7回掲載分】うまく付き合うためには

 前回は、自閉症の子どもたちに「人に関心を持ってもらう」にはどうするかといったことについて書きました。今回は、自閉症の子どもたちとどう付き合うか、すなわち自閉症の子どもたちとコミュニケーションをどうとっていったらいいのかということについて述べていきたいと思います。
 自閉症の子どもたちと付き合っているお父さんお母さんや先生方と話していると、次のような話をよくお聞きします。「わかっているのかどうかよくわからない」「わかっているのにやらない」・・・などなど。
 以前にもお話しましたが、自閉症の子どもたちは「入ってくる情報を全体として捉えること」が苦手です。字を読んだり、物の名前を覚えたりということは出来ても、それを実際の生活の中で利用したり、状況に合わせて使い分けたりするのは出来なかったりします。何と結びついているのかがピンと来ない。勘の悪い所があります。従って彼らにわかってもらうためには苦手な部分に配慮した伝え方が必要です。
 それには、4つぐらいのポイントがあると考えています。「本人がそのことに関心を向けているタイミング」に「具体的な手がかり」を用いて示し、「手がかりと言葉をセットにして伝える」。これを日常の中で「繰り返し」続けていく。
 具体的な話に入りましょう。
 どうやって叱るか。例えば、高い所に何度も登ってしまう時・・・登ろうとした瞬間に、いつもよりも厳しい声で「登らない」「降りる」と声をかける。声かけと同時に身体をつかんで止めさせる。
 登ってからしばらくした後に叱っても、何で叱られているのかがピンと来ません。叱っても登るのを見ていて止めさせなければその行動はしても良いと解釈するかもしれません。もちろんいつも未然に止められるわけではありませんが、出来るだけ早く止めるようにする方が本人にとってわかりやすくなるのです。ある時は良くてあるときは止めさせるというのではなく、いつも注意をすることが必要です。これはなかなか大変です。だから叱る事柄は理解力があまりないうちは最小限に絞るべきです。あれもこれも叱っていると本当にいけないことがわかりにくくなります。
 言葉を覚えてもらうにはどうするか。彼らがその瞬間に注目していることについて声をかけることがわかりやすいでしょう。日常生活の中で状況が理解しやすい時というと、例えば物を渡す時やお風呂や歯みがきなどの特定の行動をしている時でしょう。お菓子を渡す時に目の前に見せて「お菓子どうぞ」と声をかけます。あるいは歯磨きしながら「歯磨きしよう」「ゴシゴシだね」と語りかけます。この時に長い文章ではかえって何を言っているのかわかりにくいですので、単語かせいぜい2語文ぐらいでゆっくり話してあげてください。
 他の子供とうまく付き合えるかどうかも気にかかることです。友達に興味を持ってもなかなか入っていけなかったり、自分勝手に入っていっては嫌がられたり、関心を引くつもりで急に押したりちょっかいをかけたりしてかえって問題になったりします。
 同年代の子どもと付き合うというのは彼らにとってはなかなか骨の折れる課題です。大人のように彼らに合わせてくれないですし、付き合うには暗黙のルールが数多く存在します。こういうあいまいなもの、答えの決まっていないことはとても苦手です。ですから、当初は大人が間に入って具体的に付き合い方を練習させないといけません。「貸して」「良いよ」とか「入れて」「どうぞ」とかのやりとりを大人が促しながら実際にやってもらうのです。ですから最初は少人数のお友達と遊ばせるのが良いでしょう。いきなり集団では複雑で混乱してしまいます。本人に自信がついたら自分から集団に入っていけるようになります。ところで、おもちゃの貸し借りなんかでは、「貸して」「良いよ」を教えることが多いですが、「後で」「待って」といった「いや」の表現を覚えてもらうのを忘れがちです。友達に「貸して」と言われておもちゃを渡した後、パニックになったりします。YESとNOの両方の表現を覚えてもらうことをお忘れなく。
 状況の理解が苦手ですので、前後の状況を結びつけることが難しいです。ですから何について話しているのかがわかっているかを確認しながら話すことが必要です。また、抽象的な言い方はよくわかりません。その場で目に見える形で示される物や体験をもとに、具体的に話をしていきます。毎回毎回が、断片的な体験になっていて、同じようなことでもなかなかそれが同じ物として理解されません。ちょっとでも状況が違うと、あるいは別の日にはもう全く新しい体験と感じられ、前回の教訓が活かせなかったりします。この辺りが「勘が悪い」と表現するとぴったりするのかなと思いますが、それでも何回も何十回もくり返して体験を積み重ねていくうちにわかってくるようになります。日常生活の中で繰り返し教えていくことが大切だと思います。日常の場面は同じ事が毎日のようにありますのであっという間に何十回も繰り返せます。また、状況がわかっているので勘の悪い子どもたちにもピンと来やすいでしょう。
 「わかっているのにやる、あるいはやらない」のは、意味としてわかっていても状況に合わせた使い方がわからないのです。ひょっとしてわかっていないかもという目で見て、丁寧に教えてあげて下さい。きっとコミュニケーションが身のある楽しいものとなるでしょう。