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【第8回掲載分】自閉症の子どもたちの「これから」について

 今回は、自閉症の子どもたちの「これから」のことを述べていきたいと思います。
 自閉症の子どもたちの将来について予測するのは実はまだ難しいところがあります。今現在の自閉症の大人の方についてのデータが必ずしも当てはまらないというのも、その理由の一つです。今の自閉症の大人の方が診断を受けた20―30年程前までは、自閉症は10000人に4-6人ぐらいだとされていました。その後、乳幼児健診が行われるようになったり、自閉症やその仲間についての知識が一般にも医療関係者の間にも広がったりしたことにより、現在は、自閉症の子どもはその頃に言われていたよりもずっと多いということが分かってきました。自閉症の診断を満たすのは1000人に2人ぐらい、自閉症の仲間全体では100人に1人ぐらいというのが最近のデータです。そのうち半数は知的な遅れの見られない、いわゆる「高機能」の子どもたちです。
  「自閉症が軽症化している」と言う人がいます。それは小学校に入学する子どもたちを見ていて、今まで考えられていたよりも普通学級に進む子どもが多いことからも言えるかもしれません。自閉症の割合の増加と、自閉症の軽症化は関連があるのだと思います。一つは、自閉症やその仲間についての知識の広がりとともに、今までは自閉症とは考えられていなかった軽いものや発達の良いものにも診断がつけられるようになったこと。もう一つは、乳幼児健診が始まったことなどから、早期に自閉症が発見され、早期から療育を受けるようになったため、良好な発達をしているということが、あるのだと思います。
   だから、今の自閉症の大人の方に比べると、ずっと軽いあるいは発達の良い自閉症の大人がたくさん認識されていくことになるんだろうと、思います。そういう人達がどんな生活を送っていくのかについては、残念ながら今のところまだ、確定的な話は聞こえてきません。今現在、丁度大人になろうとする人達が模索している最中ぐらいなのでしょうか。ただ、おそらくは、今言われているよりもずっと高い割合で、社会で自立して暮らしていっていくのだろうと考えています。
 このような話をしていると、よく受ける質問があります。
  「自閉症は治るのか?」という質問です。これには2つの意味があるのかなと思います。 一つは、自閉症が治って、自閉症でない状態になるのか?例えば、肺炎が薬を飲んで菌がいなくなって症状がなくなったら「完治」となるように・・・
 以前にも述べましたが、自閉症は生まれつきの脳の障害です。詳しいところまでははっきりしていませんが、脳のどこかの部分に細かい障害(または機能不全)があってそれによって、発達が邪魔を受けます。自閉症の子どもももちろん発達をしていきますし、発達の良い子どもはいわゆる自閉症的な特徴がだんだん薄れて分かりにくくなっていきます。日常の生活の中では他の子どもと変わりなく過ごしている子もたくさんいます。しかし、「障害」ですので、「治る」ということにはならないのかなあと考えています。
 例えば、通常の生活の中では全く問題なく過ごせ、普通に付き合っているとどこが自閉症なんだろうという子どももたくさんいます。ただ、そういう子でも、ちょっとユニークなところがあったりとか、あるいは大人になっていく過程で、生活の変化(進学、就職、転居、結婚、育児、家族の変化など)や対人関係の変化(年齢が上がってくるにつれて、友達付き合いが複雑になってくる。グループに入らないといけなかったり、親友付き合いをしたり、異性と付き合ったり・・・)などがあったときに、それまでのやり方ではうまくいかなくて混乱したり不安になったりする子がいます。
 ですから、例えば発達が非常に良くて生活に問題がない子どもの場合、特別な訓練や配慮が必要でない子どもも多いですが、彼が自閉症の子どもの持つ苦手なところを持っていて、ひょっとしてそれで困ることもあるかもしれないということを、周りの方が思っているだけで随分と違ってくるかなあと考えています。そして、本人が困った時に、苦手なところに対応した援助をしてあげて、また、必要があれば我々の所に相談に来て頂けたらと思います。
 もうひとつ、「治るのか?」との質問の中に含まれる意味として、「追いつくのか?」というものがあるのかなと思います。
 前々回で述べたように、対人関係の発達により、言葉も含めた知的発達は大きく改善します。早期療育、適切で積極的な働きかけにより飛躍的に成長します。しかし、特に知的発達はその子どもの本来持っている生まれつきの発達のスピード・能力がやはり関係してきます。我々が出来ることは、彼らが本来持っている能力・発達のスピードを最大限発揮できるように援助することと言うことになるのかなと思います。

 この連載も8回目となりました。まだまだ書きたいことはたくさんあるように思えますが、ここで一段落にさせて頂くことと致します。
 最後だというのに、あまりすっきりした話にならなかったかもしれません。自閉症の子ども達の「これから」について、手放しで大丈夫と言うわけにはいかないと思っています。ただ、当たり前ですが、みんなそれぞれ、必ず大きく成長していきます。かれらと付き合うのはなかなか大変なこともありますが、必ずそれに見合うものを周りの人に与えてくれるといつも感じています。
 長い間乱筆乱文にお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました。

<おわり>